区民のための基礎情報

蒲蒲線(新空港線)とは
ルート・開業時期・事業費と大田区の負担、賛否の論点

最終更新:2026年10月21日(三セクの借入金利について追記)|初版:2026年10月20日|作成:山本照晃(大田区在住) supported by Claude

3行で

  1. 東急多摩川線の矢口渡付近から京急蒲田付近までを地下で結ぶ計画です(第一期)。開業目標は2038〜2042年ごろ。羽田空港へ直通する第二期は、ルートも事業費も未定です【公式】。
  2. 第一期の事業費は約1,248億円(税抜)。大田区の負担は約360億円(区の見解)で、区民1人あたり約4.8万円です【推計】。
  3. 次は都市計画案と環境影響評価書案の縦覧で、区民が意見を出せる機会になります。時期はまだ公表されていません。

このページの方針

01蒲蒲線とは:どこを結ぶのか

蒲蒲線(正式名称は新空港線)は、JR・東急の蒲田駅と京急蒲田駅の間、約800mの東西を鉄道で結ぶ計画です。二つの「蒲田」を結ぶことから「蒲蒲線」と呼ばれます。

蒲蒲線の模式図。東急多摩川線の矢口渡から蒲田までを約0.9km地下化し、蒲田から京急蒲田付近の蒲田新駅(仮称)まで約0.8kmの新線を造るのが第一期。蒲田新駅から京急蒲田駅へは乗換約6分20秒。京急蒲田から大鳥居方面への第二期はルート・方式・整備主体・事業費とも未定。

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第一期の区間矢口渡付近〜京急蒲田付近。多摩川線の地下化約0.9km+新線約0.8km。蒲田駅も地下駅になり、京急蒲田付近の地下に「蒲田新駅(仮称)」ができる【公式】
第二期の区間京急蒲田〜大鳥居。東急と京急で線路の幅が違うため、ルート・方式・整備主体とも検討中【公式】
整備・運行整備は第三セクター「羽田エアポートライン株式会社」(大田区61%・東急39%出資)、運行は東急電鉄【公式】
事業期間2025年10月〜2042年3月。開業目標は2038〜2042年ごろ【公式】

02いまどの段階か、次に何があるか

国の認定(2025年)は済み、いまは都市計画と環境影響評価の手続きの途中です。

年表。1982年に区の基本構想に東西連絡線、2016年に国の答申第198号、2022年に都区合意と三セク設立、2025年に国が第一期の計画を認定、2026年7月に都市計画素案の説明会、8月に環境影響評価の調査計画書の縦覧と意見募集(終了)。この先は時期未公表で、都市計画案・環境影響評価書案の縦覧(意見を出せる)、都市計画審議会と都市計画決定、事業認可から着工へ。開業目標は2038〜2042年。

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都市計画が決定されると、計画の変更や廃止には同じ重さの手続きが必要になります。区民が意見を出せる次の機会は、都市計画案と環境影響評価書案の縦覧です。時期は東京都と大田区のページで告知されます(情報を得る方法)。

03何が便利になるか

所要時間の比較(ピーク時、乗換・待ち時間込み)。中目黒から京急蒲田付近は約36分から約23分へ約13分短縮。自由が丘から京急蒲田付近は約37分から約15分へ約22分短縮。開業後の乗換は、蒲田新駅から京急蒲田駅が約6分20秒、多摩川線からJR・池上線(蒲田駅)が約5分20秒。

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区が挙げる効果

出典:大田区 新空港線メインページ【公式】

使い方によって変わること

東横線方面から京急蒲田方面へ向かう人の所要時間は短くなります。一方、多摩川線が地下化されるため、蒲田駅で多摩川線からJR・池上線に乗り換える人には上下移動が加わります(約5分20秒)。第一期では、羽田空港へ行くには蒲田新駅から京急蒲田駅への乗換(約6分20秒)が残ります【公式:区Q&A A11】。

04いくらかかり、誰が払うか

費用負担の構造。第一期の事業費は約1,248億円(税抜)。国の補助が1/3、地方の補助が1/3(都3割・大田区7割)、三セクの借入が1/3で、借入は東急の線路使用料で40年以内に返済する計画。大田区の負担は補助金約278億円と三セクへの出資約83億円で、合計約360億円(区の見解)。

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約1,248億円第一期の事業費(税抜)
当初は1,360億円(税込)
約360億円大田区の負担
(区の見解)
約117億円区の積立基金
(2025年度末)
1.5費用便益比
(当初2.0から修正)

出典:大田区 新空港線Q&A(A13・A14・A17)、新空港線メインページ【公式】

大田区が地方負担の7割を持つのは、「空港アクセスを除く大田区発着の旅客分」を区が、「空港アクセスなどその他の旅客分」を都が負担する、という整理によるものです【公式:区Q&A A16】。

05大田区にとっての費用対効果

費用対効果は「誰にとっての」で答えが変わります。公表されている数字と、まだ公表されていない数字を分けて示します。

大田区の負担。補助金約278億円、三セクへの出資約83億円、合計約360億円(区の見解)。区民1人あたり約4.8万円(推計)。区の負担額に含まれない三セクの借入は最大約416億円(事業費の1/3、推計)で、東急の線路使用料で返済する計画。公表されていない点は、借入を返せない場合の負担者(区の保証の有無)、線路使用料の水準、物価上昇時の分担、大田区だけの便益の金額。

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公表されている数字

前提によって変わる数字

金利上昇の影響

第一期の事業費の約1/3は、整備主体の三セク「羽田エアポートライン」が借り入れ、東急が支払う線路使用料で40年以内に返済する計画です【公式:区Q&A A19】。区の計画では、鉄道・運輸機構から財政投融資を借り入れる予定(2026年3月以降)とされています【公式:地域公共交通利便増進実施計画】。

財政投融資の貸付金利は、国債の利回りを基準に決まります【公式:財務省】。金利が上がれば、借入の利息が増え、返済の負担も重くなるはずです。たとえば借入が上限の約416億円で金利が1%違うと、利息は初年度だけで年約4億円変わります【推計:約416億円×1%の単純計算】。

ところが、この影響は公表資料からは読み取れません。

区の負担額(約360億円)には借入が含まれていないため、金利上昇の影響はこの金額に表れません。影響があるとすれば、三セクの収支を通じて後から区に及ぶ形になります。

まだ公表されていない数字

大田区だけにとっての便益の金額は公表されていません。区の費用(約360億円)と区の便益を同じ物差しで比べる資料がないため、「大田区にとっての費用対効果」は現時点では判断の材料がそろっていません。必要な情報はまだ公表されていないことにまとめました。

06誰が得をし、誰が負担するか

立場主に得るもの主に負うもの
東横線・多摩川線方面から京急蒲田・羽田方面へ行く人所要時間の短縮、乗換の減少―
蒲田駅で多摩川線からJR・池上線に乗り換える人雨に濡れない移動地下化による上下移動(乗換約5分20秒)
蒲田駅周辺の住民・商店東西の行き来、人の流れの増加事業期間(2042年3月まで)の工事の影響
区外から羽田へ向かう人(首都圏)空港アクセスの改善(第二期で直通すれば大きくなる)―(補助は国・都の税金)
大田区(区民の税金)区の東西交通、まちづくりの機会約360億円(区の見解)、三セクの株主としての責任
東急電鉄ネットワークの拡大、運賃収入線路使用料の支払い、出資39%

表は区の公表資料をもとにした整理です。

07推進の論拠と、慎重・反対の論拠

同じ論点ごとに、それぞれの側の最も強い論拠を並べました。推進の論拠は区・都・東急の公表資料、慎重・反対の論拠は区議会資料・説明会での質疑・公開されている意見書などから整理しています。

論点推進の論拠慎重・反対の論拠
東西の移動約800mを雨に濡れず段差なく移動できる。高齢者・障がいのある方・ベビーカーに有効必要性は共有するが、屋根付き歩廊、段差解消、シャトル、乗合交通などで、より早く安く実現できる可能性がある
羽田・広域へのアクセス渋谷・新宿・埼玉南西部から羽田への時間が短くなり、首都圏の鉄道網が強くなる第一期では羽田に直通せず、京急蒲田での乗換が残る。直通を担う第二期は未定
費用と便益費用便益比1.5で、国の補助の基準(1.0)を上回る。国の審査を経て認定された便益の多くは区外に生じる一方、地方負担の7割を区が持つ。区だけの便益と負担の比較が公表されていない
段階整備第一期だけでも東西移動と東横線直通の効果がある。第二期は引き続き実現を目指す計画全体の費用対効果は第二期の計画で決まる。第一期の支出が、第二期を進める理由になりうる
災害時事故・災害時の代替ルートになる。バスや動く歩道では代替できない代替性の価値を金額で示した資料がない。既存の京急・JR・モノレール網に依存する
まちづくり蒲田駅周辺の建物更新の時期と重なり、機能更新の起爆剤になるまちづくりは鉄道と切り離しても進められる。開業を待つと更新が遅れる
財政リスク三セクの借入は東急の線路使用料で返す。区の負担には都市計画交付金などの財源を想定している使用料の水準、返せない場合の負担者、物価上昇時の分担、金利上昇時の影響が公表されていない。都は区負担ゼロを約束していない
経緯40年来の地域の悲願。国の答申で公共性が認められ、法に基づく補助制度がある判断は継続年数ではなく、現時点の費用・便益・将来の暮らしとの適合で行うべき

推進の論拠の出典:大田区 新空港線メインページ・Q&A(A3・A4・A17・A23)、東京都報道発表(2026年7月21日)【公式】。慎重・反対の論拠の出典:区議会資料(2025年10月21日)、説明会参加者のレポート【報道】ほか。

08まだ公表されていないこと

賛否を問わず、判断に必要なのに公表資料で確認できない項目です。説明会での質問や、区議会への陳情(紹介議員は不要)で公開を求めることができます。

09区民が情報を得る・意見を出す方法

情報を得る

意見を出す

  1. 縦覧への意見書:都市計画案と環境影響評価書案が縦覧されるときに、誰でも意見書を出せます。
  2. 区議会への陳情:紹介議員は不要です。たとえば「三セクの資金調達条件や線路使用料の公開」は、賛否を問わず求められる内容です。
  3. 説明会での質問:今後の用地測量・工事などの説明会で質問できます。

10よくある質問

いつ開業しますか?

開業目標は2038〜2042年ごろ(令和20年代前半)で、事業期間は2042年3月までです【公式】。

羽田空港まで直通しますか?

第一期では直通しません。蒲田新駅(仮称)から京急蒲田駅へ約6分20秒の乗換が必要です。羽田方面への直通を担う第二期(京急蒲田〜大鳥居)は、ルート・方式・整備主体が未定です【公式】。

大田区の負担はいくらですか?

区の見解では約360億円(補助金約278億円+三セクへの出資約83億円)です。区民1人あたり約4.8万円になります【推計】。財源は都と調整中です。詳しくは大田区にとっての費用対効果をご覧ください。

金利が上がると、区の負担は増えますか?

区が示す負担額(約360億円)には、三セクの借入は含まれていません。金利が上がると三セクの利息が増えますが、その分を線路使用料で賄うのか、区が補うことになるのかは公表されていません【未確認】。詳しくは大田区にとっての費用対効果をご覧ください。

区の負担はゼロにできないのですか?

区は都市計画交付金などの財源を想定して都と調整中としています【公式】。2026年7月の説明会では、都が「区負担ゼロの約束はない」と答えたと報告されています【報道】。

工事は街にどんな影響がありますか?

多摩川線の地下化と新線の地下工事が、事業期間(2042年3月まで)にわたって行われます。具体的な工事の内容と影響は、今後の工事説明会で示される予定です。

計画を止めることはできますか?

国の認定(2025年)と都区合意(2022年)は済んでいますが、都市計画の決定と事業認可はこれからです。区は推進主体であり、変更や中止には都・区・事業者の協議と、それぞれの手続きが必要になります。手続きが進むほど、変更の負担は大きくなります。

なぜ「蒲蒲線」と呼ばれるのですか?

JR・東急の「蒲田」と京急の「蒲田」という二つの蒲田を結ぶことから、地元で「蒲蒲線」と呼ばれています。正式名称は「新空港線」です。

11出典

数字の区分:【公式】区・都・国の公表資料/【報道】報道、区議・区民の公開レポート/【推計】このページの試算(計算式を併記)

大田区・東京都・国

報道・説明会参加者のレポート

人口:住民基本台帳 748,549人(2026年10月1日)【公式】

作成者の立場

このページの作成者(大田区在住の一区民)は、「大田区ビジョン2050【私案】」で、蒲蒲線の即時凍結・廃止を提言しています。理由は、第一期では羽田に直通しないこと、便益の多くが区外に及ぶ一方で区の負担が約360億円にのぼること、浮いた財源を2050年の暮らし(地域の居場所づくりやAIの学びの拠点など)に回すべきと考えることです。

これは一つの意見です。このページの事実と数字は、賛成・反対どちらの方にも使っていただけるよう整理しています。誤りや補うべき論拠があれば、ぜひお知らせください。

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