区民のための基礎情報
蒲蒲線(新空港線)とは
ルート・開業時期・事業費と大田区の負担、賛否の論点
3行で
- 東急多摩川線の矢口渡付近から京急蒲田付近までを地下で結ぶ計画です(第一期)。開業目標は2038〜2042年ごろ。羽田空港へ直通する第二期は、ルートも事業費も未定です【公式】。
- 第一期の事業費は約1,248億円(税抜)。大田区の負担は約360億円(区の見解)で、区民1人あたり約4.8万円です【推計】。
- 次は都市計画案と環境影響評価書案の縦覧で、区民が意見を出せる機会になります。時期はまだ公表されていません。
このページの方針
- 賛否を決める前に、区民が同じ数字を見られることを目的にしています。数字は区・都・国の公表資料を優先し、出典を付けています。
- 推進と慎重・反対の両方の論拠を、同じ形式で並べています。特定の候補者や政党を支持するものではなく、候補者・政党の名前は載せていません。
- 作成者は、蒲蒲線の「即時凍結・廃止」を提言しています。意見はページの最後の作成者の立場にまとめ、本文には混ぜていません。
01蒲蒲線とは:どこを結ぶのか
蒲蒲線(正式名称は新空港線)は、JR・東急の蒲田駅と京急蒲田駅の間、約800mの東西を鉄道で結ぶ計画です。二つの「蒲田」を結ぶことから「蒲蒲線」と呼ばれます。
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| 第一期の区間 | 矢口渡付近〜京急蒲田付近。多摩川線の地下化約0.9km+新線約0.8km。蒲田駅も地下駅になり、京急蒲田付近の地下に「蒲田新駅(仮称)」ができる【公式】 |
|---|---|
| 第二期の区間 | 京急蒲田〜大鳥居。東急と京急で線路の幅が違うため、ルート・方式・整備主体とも検討中【公式】 |
| 整備・運行 | 整備は第三セクター「羽田エアポートライン株式会社」(大田区61%・東急39%出資)、運行は東急電鉄【公式】 |
| 事業期間 | 2025年10月〜2042年3月。開業目標は2038〜2042年ごろ【公式】 |
02いまどの段階か、次に何があるか
国の認定(2025年)は済み、いまは都市計画と環境影響評価の手続きの途中です。
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都市計画が決定されると、計画の変更や廃止には同じ重さの手続きが必要になります。区民が意見を出せる次の機会は、都市計画案と環境影響評価書案の縦覧です。時期は東京都と大田区のページで告知されます(情報を得る方法)。
03何が便利になるか
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区が挙げる効果
- 区内の東西移動が、天気に左右されず、高齢の方・障がいのある方・ベビーカーでも安全で快適になる
- 東横線などとの直通で、羽田空港や都心へのアクセスが良くなる
- 新しい人の流れによる地域の活性化と経済効果
- 自動車から鉄道への転換による脱炭素
- 災害時の代替ルート
出典:大田区 新空港線メインページ【公式】
使い方によって変わること
東横線方面から京急蒲田方面へ向かう人の所要時間は短くなります。一方、多摩川線が地下化されるため、蒲田駅で多摩川線からJR・池上線に乗り換える人には上下移動が加わります(約5分20秒)。第一期では、羽田空港へ行くには蒲田新駅から京急蒲田駅への乗換(約6分20秒)が残ります【公式:区Q&A A11】。
04いくらかかり、誰が払うか
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当初は1,360億円(税込)
(区の見解)
(2025年度末)
(当初2.0から修正)
出典:大田区 新空港線Q&A(A13・A14・A17)、新空港線メインページ【公式】
大田区が地方負担の7割を持つのは、「空港アクセスを除く大田区発着の旅客分」を区が、「空港アクセスなどその他の旅客分」を都が負担する、という整理によるものです【公式:区Q&A A16】。
05大田区にとっての費用対効果
費用対効果は「誰にとっての」で答えが変わります。公表されている数字と、まだ公表されていない数字を分けて示します。
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公表されている数字
- 費用便益比1.5:社会全体の便益が費用の1.5倍、という意味です。一般に1.0を上回れば社会的に効率的とされます【公式:区Q&A A17】。この便益には、渋谷・新宿方面などから羽田へ向かう人の時間短縮など、首都圏全体の便益が含まれます。
- 区の負担約360億円:補助金約278億円と出資約83億円の合計です【公式】。区民1人あたりにすると約4.8万円です【推計:約360億円÷住民約74.9万人】。
- 財源:区は都市計画交付金や特別区財政調整交付金の特別交付金を想定し、都と調整中としています【公式:区Q&A A21】。2026年7月の説明会では、都が「区の負担をゼロにする約束はない」と答えたと報告されています【報道:説明会参加者のレポート】。
前提によって変わる数字
- 区の負担額は、何を含めるかで変わります。区の見解(約360億円)は補助金と出資の合計です。三セクの借入の一部まで「区民の負担」に含める試算も公表されており、その場合はより大きい金額になります。
- 事業費は「変更の可能性がある」とされています。既存の建物の直下を補強する費用約55億円は補助の対象外です【公式:区議会 交通政策調査特別委員会資料 2025年10月21日】。
金利上昇の影響
第一期の事業費の約1/3は、整備主体の三セク「羽田エアポートライン」が借り入れ、東急が支払う線路使用料で40年以内に返済する計画です【公式:区Q&A A19】。区の計画では、鉄道・運輸機構から財政投融資を借り入れる予定(2026年3月以降)とされています【公式:地域公共交通利便増進実施計画】。
財政投融資の貸付金利は、国債の利回りを基準に決まります【公式:財務省】。金利が上がれば、借入の利息が増え、返済の負担も重くなるはずです。たとえば借入が上限の約416億円で金利が1%違うと、利息は初年度だけで年約4億円変わります【推計:約416億円×1%の単純計算】。
ところが、この影響は公表資料からは読み取れません。
- 借入が実行されたかどうか、借入額、金利、固定金利か途中で見直す方式か
- 返済計画が何%の金利を前提にしているか
- 金利が上がったとき、線路使用料を見直すのか、三セクの収支で吸収するのか
- 返済が足りなくなった場合に、区(筆頭株主・61%)が損失補償や追加出資をするのか
区の負担額(約360億円)には借入が含まれていないため、金利上昇の影響はこの金額に表れません。影響があるとすれば、三セクの収支を通じて後から区に及ぶ形になります。
まだ公表されていない数字
大田区だけにとっての便益の金額は公表されていません。区の費用(約360億円)と区の便益を同じ物差しで比べる資料がないため、「大田区にとっての費用対効果」は現時点では判断の材料がそろっていません。必要な情報はまだ公表されていないことにまとめました。
06誰が得をし、誰が負担するか
| 立場 | 主に得るもの | 主に負うもの |
|---|---|---|
| 東横線・多摩川線方面から京急蒲田・羽田方面へ行く人 | 所要時間の短縮、乗換の減少 | ― |
| 蒲田駅で多摩川線からJR・池上線に乗り換える人 | 雨に濡れない移動 | 地下化による上下移動(乗換約5分20秒) |
| 蒲田駅周辺の住民・商店 | 東西の行き来、人の流れの増加 | 事業期間(2042年3月まで)の工事の影響 |
| 区外から羽田へ向かう人(首都圏) | 空港アクセスの改善(第二期で直通すれば大きくなる) | ―(補助は国・都の税金) |
| 大田区(区民の税金) | 区の東西交通、まちづくりの機会 | 約360億円(区の見解)、三セクの株主としての責任 |
| 東急電鉄 | ネットワークの拡大、運賃収入 | 線路使用料の支払い、出資39% |
表は区の公表資料をもとにした整理です。
07推進の論拠と、慎重・反対の論拠
同じ論点ごとに、それぞれの側の最も強い論拠を並べました。推進の論拠は区・都・東急の公表資料、慎重・反対の論拠は区議会資料・説明会での質疑・公開されている意見書などから整理しています。
| 論点 | 推進の論拠 | 慎重・反対の論拠 |
|---|---|---|
| 東西の移動 | 約800mを雨に濡れず段差なく移動できる。高齢者・障がいのある方・ベビーカーに有効 | 必要性は共有するが、屋根付き歩廊、段差解消、シャトル、乗合交通などで、より早く安く実現できる可能性がある |
| 羽田・広域へのアクセス | 渋谷・新宿・埼玉南西部から羽田への時間が短くなり、首都圏の鉄道網が強くなる | 第一期では羽田に直通せず、京急蒲田での乗換が残る。直通を担う第二期は未定 |
| 費用と便益 | 費用便益比1.5で、国の補助の基準(1.0)を上回る。国の審査を経て認定された | 便益の多くは区外に生じる一方、地方負担の7割を区が持つ。区だけの便益と負担の比較が公表されていない |
| 段階整備 | 第一期だけでも東西移動と東横線直通の効果がある。第二期は引き続き実現を目指す | 計画全体の費用対効果は第二期の計画で決まる。第一期の支出が、第二期を進める理由になりうる |
| 災害時 | 事故・災害時の代替ルートになる。バスや動く歩道では代替できない | 代替性の価値を金額で示した資料がない。既存の京急・JR・モノレール網に依存する |
| まちづくり | 蒲田駅周辺の建物更新の時期と重なり、機能更新の起爆剤になる | まちづくりは鉄道と切り離しても進められる。開業を待つと更新が遅れる |
| 財政リスク | 三セクの借入は東急の線路使用料で返す。区の負担には都市計画交付金などの財源を想定している | 使用料の水準、返せない場合の負担者、物価上昇時の分担、金利上昇時の影響が公表されていない。都は区負担ゼロを約束していない |
| 経緯 | 40年来の地域の悲願。国の答申で公共性が認められ、法に基づく補助制度がある | 判断は継続年数ではなく、現時点の費用・便益・将来の暮らしとの適合で行うべき |
推進の論拠の出典:大田区 新空港線メインページ・Q&A(A3・A4・A17・A23)、東京都報道発表(2026年7月21日)【公式】。慎重・反対の論拠の出典:区議会資料(2025年10月21日)、説明会参加者のレポート【報道】ほか。
08まだ公表されていないこと
賛否を問わず、判断に必要なのに公表資料で確認できない項目です。説明会での質問や、区議会への陳情(紹介議員は不要)で公開を求めることができます。
- 三セクの借入に対する、区の損失補償・債務保証の有無
- 東急が支払う線路使用料の水準と、借入の返済計画
- 借入を返せない場合に、誰が負担するか
- 物価上昇で事業費が増えた場合の、都と区の分担
- 三セクの借入の実行状況・金額・金利条件と、金利が上がった場合の返済計画への影響(詳しく)
- 大田区だけにとっての便益の金額(費用便益比1.5の内訳)
- 第二期の事業費・方式・整備主体の検討状況
- 区がこれまでに出資・支出した累計額と、計画を止めた場合の区の損失額
- 都市計画案の縦覧と都市計画審議会の予定時期
- 運賃の水準【公表資料では確認できませんでした】
09区民が情報を得る・意見を出す方法
情報を得る
- 大田区 新空港線(蒲蒲線)メインページ
- 大田区 新空港線 よくある質問(Q&A)
- 大田区 都市計画素案説明会(2026年7月)
- 東京都 環境影響評価調査計画書の提出(2026年7月21日)
- 区議会 交通政策調査特別委員会の資料(区議会ホームページの委員会資料)
意見を出す
- 縦覧への意見書:都市計画案と環境影響評価書案が縦覧されるときに、誰でも意見書を出せます。
- 区議会への陳情:紹介議員は不要です。たとえば「三セクの資金調達条件や線路使用料の公開」は、賛否を問わず求められる内容です。
- 説明会での質問:今後の用地測量・工事などの説明会で質問できます。
10よくある質問
いつ開業しますか?
開業目標は2038〜2042年ごろ(令和20年代前半)で、事業期間は2042年3月までです【公式】。
羽田空港まで直通しますか?
第一期では直通しません。蒲田新駅(仮称)から京急蒲田駅へ約6分20秒の乗換が必要です。羽田方面への直通を担う第二期(京急蒲田〜大鳥居)は、ルート・方式・整備主体が未定です【公式】。
大田区の負担はいくらですか?
区の見解では約360億円(補助金約278億円+三セクへの出資約83億円)です。区民1人あたり約4.8万円になります【推計】。財源は都と調整中です。詳しくは大田区にとっての費用対効果をご覧ください。
金利が上がると、区の負担は増えますか?
区が示す負担額(約360億円)には、三セクの借入は含まれていません。金利が上がると三セクの利息が増えますが、その分を線路使用料で賄うのか、区が補うことになるのかは公表されていません【未確認】。詳しくは大田区にとっての費用対効果をご覧ください。
区の負担はゼロにできないのですか?
区は都市計画交付金などの財源を想定して都と調整中としています【公式】。2026年7月の説明会では、都が「区負担ゼロの約束はない」と答えたと報告されています【報道】。
工事は街にどんな影響がありますか?
多摩川線の地下化と新線の地下工事が、事業期間(2042年3月まで)にわたって行われます。具体的な工事の内容と影響は、今後の工事説明会で示される予定です。
計画を止めることはできますか?
国の認定(2025年)と都区合意(2022年)は済んでいますが、都市計画の決定と事業認可はこれからです。区は推進主体であり、変更や中止には都・区・事業者の協議と、それぞれの手続きが必要になります。手続きが進むほど、変更の負担は大きくなります。
なぜ「蒲蒲線」と呼ばれるのですか?
JR・東急の「蒲田」と京急の「蒲田」という二つの蒲田を結ぶことから、地元で「蒲蒲線」と呼ばれています。正式名称は「新空港線」です。
11出典
数字の区分:【公式】区・都・国の公表資料/【報道】報道、区議・区民の公開レポート/【推計】このページの試算(計算式を併記)
大田区・東京都・国
- 大田区 新空港線(蒲蒲線)メインページ(2026年3月31日更新)
- 大田区 新空港線 よくある質問(Q&A)(2026年4月23日更新)
- 大田区 都市計画素案説明会
- 大田区議会 交通政策調査特別委員会資料(2025年10月21日)
- 大田区議会 交通政策調査特別委員会資料(2026年8月4日)
- 東京都 報道発表 環境影響評価調査計画書の提出(2026年7月21日)
- 東京都・大田区 都区合意文(2022年6月6日)
- 大田区 地域公共交通利便増進実施計画(新空港線)(財政投融資の借入予定)
- 財務省 財政融資資金の貸付金利の決まり方
- 財務省 財政融資資金貸付金利(2026年10月1日以降適用)
報道・説明会参加者のレポート
- 境治氏 蒲蒲線説明会レポート(2026年7月27日)(1982年の基本構想の記述など)
- 区議による説明会レポート(2026年7月)(区負担ゼロに関する都の回答)
- マイナビニュース 新空港線計画が具体化(2026年8月11日)
人口:住民基本台帳 748,549人(2026年10月1日)【公式】