マクロリスク・モニター 1/4

マクロリスクの全体像

at.AI / 最終更新 2026年11月3日

このページの要点

目次

  1. なぜ金融指標だけでは足りないか
  2. 3つの軸
  3. 5大リスクと5つの連鎖
  4. 波及を3層で見る
  5. 測るもの、測らないもの

なぜ金融指標だけでは足りないか

2007年6月、米HY OASは約2.4%、VIXは約16でした。市場の緊張を測るFCOを今のルールで遡及計算すると5.7で、2026年9月の5.3とほぼ同じ低さです。ところが金融の脆弱性を測るFFIは80と高い水準でした。

逆に2020年3月は市場の緊張が一気に高まりましたが、客観版のマクロ圧力は全期間の下位4%という低い位置にありました。市場の指標と実体のリスクは、別々に動くことがあります。

そこで価格の動きとは別に、気候や食料、財政、エネルギー、地政学、雇用の状態を毎月同じルールで採点し、公開します。

3つの軸

GRCS マクロ圧力

Global Rolling Crisis Score。5大リスクの水準と結合度を合成します。2026年9月は85.70です。

FFI 金融の脆弱性

Financial Fragility Index。平時に蓄積する弱さを測ります。2026年9月は71.45です。

FCO 金融ストレス

Financial Contagion Overlay。今起きている緊張を測ります。2026年9月は5.34です。

3つの組み合わせでレジームを判定します。2026年9月は高いマクロ圧力と高い脆弱性、低い金融ストレスの組み合わせで、「複合マクロ・ストレス+潜在脆弱性」です。補助的に、連鎖の強度(SCI)、国別の社会不安(SURI)、地域紛争(RCEI)も測ります。定義はリスク計測モデルで説明します。

5大リスクと5つの連鎖

5大リスクは互いに影響します。エネルギーの混乱はインフレと金利を通じて財政に届き、財政の余力が減ると補助金が削られ、社会不安につながります。

5大リスクと5連鎖の図 各連鎖の段階を矢印でつないだ図です。同じ内容を下の表に示します。 5大リスク① 気候・食料・水② 財政③ エネルギー・海運④ 政治・地政学⑤ AI・雇用5つの連鎖(矢印の順に波及)連鎖1気候農業食料家計デモ連鎖2地政学エネルギーインフレ金利財政連鎖3高金利財政余力補助金削減社会不安連鎖4食料・燃料政情不安通貨安輸入インフレ連鎖5AI採用減若年所得消費・政治
連鎖起点中間着地補足
連鎖1肥料価格(t−6)、気温偏差、干ばつ面積(t−3)FAO実質指数(t−3)、主要国の収量改定(t−2)低所得国のFood Gap(t)、抗議件数(t+3)30年分のデータで裏づけあり
連鎖2チョークポイント通航量(t−3)Brent、TTF(t−1)、コアCPI(t)30年金利(t)、利払い/税収(t+6)価格だけでなく物量を確認
連鎖330年金利、新興国スプレッド(t−6)利払い/税収(t−3)、IMFプログラム入り(t−1)補助金削減の事例(t)、SURI(t+3)補助金削減の実例でL=4
連鎖4FAO、燃料価格(t−3)SURI、政情不安(t−1)為替(t)、輸入物価(t+3)通貨が15%超下落+食料高の国数
連鎖5AIを理由とするレイオフ(t−6)エントリーレベル求人(t−3)若年賃金(t)、消費と投票(t+6)最も遅く現れる

tは当月、数字は月数です。連鎖の段階は図と同じです。ラグは目安で、推定値ではありません。連鎖1のほかは構造的な推論です。

波及を3層で見る

金融への波及は1つの数字では見えません。そこで3層に分けて確認します。

層何を見るか主な指標
価格市場が価格をどう付けているかHY OAS、VIX、新興国スプレッド、ドル、タームプレミアム、30年債
信用・レバレッジお金を借りやすいか、借り手の負債はどうかNFCIの信用とレバレッジ、銀行の貸出態度
配管資金の流れそのものが機能しているかSOFR−IORB、連銀貸出、STLFSI4、NFCI総合

測るもの、測らないもの

2026年9月に行った356か月の全数検定では、客観版のマクロ圧力は消費者センチメントやインフレと関係を持つ一方、将来の金融ストレスとの関係は確認できませんでした。詳しくはモデルの検証に記します。

そのためこのシリーズは、実体、社会、供給網のリスクを測るものと位置づけます。金融危機の予測や売買のタイミングには使えません。予測の成績も公開します。

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