マクロリスク・モニター 3/4

モデルの検証

at.AI / 最終更新 2026年11月3日

このページの要点

目次

  1. 過去5エピソードへの遡及採点
  2. 356か月の全数検定
  3. 主観と客観の乖離
  4. 検証中の仮説
  5. 毎月更新する項目

過去5エピソードへの遡及採点

同じルールで過去の局面を採点し直しました。すべて遡及適用で、当時の公式な指数ではありません。生データの一部は概算です。

時点性格GRCS5GRCS4FFIFCOSURI≥60RCEIレジームproxy-GRCS(パーセンタイル)
2007年6月危機前の静穏38.9644.0080.005.69445.0平常
Normal
80.2 (95.0)
2008年10月リーマン破綻57.7665.0555.0095.58850.0金融主導の危機
Financial-Led Crisis
70.1 (66.2)
2011年2月アラブの春+食料高64.5673.0555.0012.401162.0マクロ圧力の上昇
Elevated Macro Stress
81.9 (97.2)
2020年3月COVID61.0066.1062.0062.11755.0金融ストレス
Financial Stress
23.5 (4.2)
2022年3月ウクライナ侵攻77.5283.8560.0021.181270.0複合マクロ・ストレス
Compound Macro Stress
84.9 (98.9)
2026年9月現在85.7089.2871.455.341280.7複合マクロ・ストレス+潜在脆弱性
Compound Macro Stress / Latent Fragility
74.1 (82.4)

レジームは現行の判定ルールを当てはめた結果です。

6時点のGRCS4とFFIの散布図
図1 6時点のGRCS4とFFI。2026年9月はどちらも高い位置にあります。
時点VIXHY OAS(%)FAOBrent(ドル)30年債(%)
2007年6月16.22.4100715.1
2008年10月61.216110724.2
2011年2月18.44.6137.61044.6
2020年3月57.78.896321.5
2022年3月27.83.9160.21182.4
2026年9月16.343.12136116.85.37

読み取れること。

客観と主観には両方向の大きな差もあります。2007年6月は客観80.2、主観44で、2020年3月は客観23.5、主観66.1です。客観の4軸は急な需要ショックを捉えにくく、主観は当時の金融不安を織り込みにくい面があります。

356か月の全数検定

設計。1997年1月から2026年8月までの356か月について、proxy-GRCSから将来の金融と実体の指標を説明できるかを調べました。先行期間は0〜24か月です。p値は24か月の循環ブロック・ブートストラップ(2,000反復)で計算しました。この検定は2026年9月14日に実行したもので、統一前のデータに基づきます。再実行はしていません。

proxy-GRCSが説明できる分散の割合の横棒グラフ
図2 proxy-GRCSが説明できる分散の割合(各系列で最も高い先行期間)。実体側は高く、金融側は低い結果です。
系列h=0h=3h=6h=12h=18h=24
STLFSI4−0.07 (0.64)+0.03 (0.86)+0.07 (0.70)+0.05 (0.77)+0.01 (0.97)−0.04 (0.81)
NFCI+0.04 (0.82)+0.12 (0.48)+0.17 (0.37)+0.15 (0.49)+0.11 (0.57)+0.05 (0.76)
VIX−0.20 (0.14)−0.13 (0.37)−0.09 (0.55)−0.12 (0.44)−0.20 (0.18)−0.21 (0.15)
CPI前年比+0.29 (0.12)+0.26 (0.20)+0.19 (0.34)−0.05 (0.78)−0.22 (0.17)−0.38 (0.04)
消費者センチメント−0.48 (0.01)−0.49 (0.01)−0.48 (0.01)−0.46 (0.01)−0.39 (0.05)−0.30 (0.14)

相関係数(p値)。hは先行月数です。

系列R²(%)先行月数
消費者センチメント23.73
CPI前年比14.424
VIX4.524
NFCI3.06
STLFSI40.56

VIXの4.5%は符号が逆です。

軸STLFSI4NFCIVIXCPIセンチメント
食料−0.03+0.11−0.16+0.16−0.45
財政+0.01+0.04+0.07+0.15−0.20
エネルギー0.00+0.09−0.14+0.25−0.20
地政学−0.18−0.17−0.20+0.18−0.27
合成−0.07+0.04−0.20+0.29−0.48

軸ごとの同時相関です。

先行18か月に起きる確率(%)無条件G≥70(120か月)G≥80(19か月)
STLFSI4が0.75超46.749.257.9
VIXが30超50.056.784.2
インフレ加速65.165.847.4
家計悪化59.850.836.8

G≥80の19か月は2004年、2011年、2022年の3局面に集中し、独立な観測は多くありません。

期間STLFSI h=0h=12NFCI h=0h=12VIX h=0h=12n
規制前 1997年1月〜2007年6月−0.33 (0.28)−0.26 (0.33)−0.46 (0.12)−0.15 (0.59)−0.48 (0.08)−0.48 (0.06)126
危機期 2007年7月〜2009年12月−0.61 (0.12)+0.51 (0.15)−0.74 (0.06)+0.51 (0.17)−0.77 (0.04)+0.45 (0.16)30
規制後 2010年1月〜2026年8月−0.27 (0.07)−0.03 (0.86)−0.05 (0.80)+0.11 (0.60)−0.12 (0.42)−0.13 (0.51)199

期間別の相関係数(p値)です。規制前と規制後は、金融危機後の規制強化の前後を指します。

時点連銀貸出(十億ドル)介入ストレスSTLFSI4NFCIVIX
2007年6月0.90———
2008年10月441.4100+8.50+2.5061.2
2011年2月22.621———
2020年3月109.163+3.98+0.0957.7
2022年3月27.927———
2023年3月354.294+0.12−0.1821.6
2024年3月172.575———
2026年8月5.70———

連銀貸出が目立った時点と市場指標の比較で、—は比較対象外の時点です。2024年3月はBTFPの裁定による偽陽性です。連銀貸出が多くても市場の緊張を示さない例です。

結論。実体、社会、供給網のリスクについては、消費者センチメントで23.7%、CPIで14.4%の説明力があり、関係を支持します。金融危機については、STLFSI4で0.5%、NFCIで3.0%にとどまり、関係がある証拠は得られませんでした。

留保。

主観と客観の乖離

1996年12月から2026年9月までのproxy-GRCSの折れ線グラフ
図3 proxy-GRCSの長期推移。75以上は全期間で53か月あります。2026年9月の74.1はその直下です。
2026年GRCS4(主観)proxy-GRCS(客観)パーセンタイル差
1月50.7760.742.5−9.9
2月57.0756.834.1+0.2
3月73.1574.181.6−0.9
4月79.1476.088.0+3.2
5月82.0174.884.4+7.2
6月83.2366.355.6+17.0
7月84.3167.257.5+17.2
8月87.0165.153.4+21.9
9月89.2874.182.4+15.2

客観には2つの山があります。3〜5月(パーセンタイル82〜88)と9月(82)で、6〜8月は中位(53〜58)です。主観は1月から毎月上がっています。この形の違いは、主観の採点に上方向の偏りがある可能性を示します。

9月の値について。作成時の76.3(88.5パーセンタイル)はBrentに世界銀行の値、GPRに速報値、実質化に8月CPIを使っており、9月だけ出所が混ざっていました。全期間をIMFに統一すると74.1(82.4パーセンタイル)です。差は当初の+13.0から+15.2に変わり、基準の±15を超えます。次号で採点基準を点検します。

検証中の仮説

2026年の状況について、次の仮説を検証しています。結論ではありません。

「マクロショックは金利経路を通じて金融資産の価格には波及し始めたが、金融システムの機能には波及していない。後者は金融機関の資本と流動性の厚みによるものと考えられるが、借り手側のレバレッジと銀行の債券含み損という、価格指数に映りにくいリスクは蓄積しつつある」

仮説内容現状
H1マクロ圧力が上昇している主観で支持。客観は再上昇だが3〜5月の水準で、高圧力の閾値の近傍
H2金融には波及していない配管と信用条件では支持。価格の層は9月に初めて崩れ始めた
H3波及しない理由は金融の強固さである未決。確度は低い
競合する説明内容根拠と反証
A 真の強靭性資本と流動性が厚いCET1は2007年の7%から13%へ。ただしSVBが反証
B 介入依存緊張は介入で抑えられている2020年3月、2023年3月(連銀貸出3,542億ドル)。2026年9月は88億ドルで平時
C リスク移動と計測漏れ指数に映らない所へリスクが移った不透明資産73、CCCスプレッド968bp、満期保有債券の含み損
D 因果が弱いそもそも関係が弱い相関はほぼ0で、規制前も同様
判定の組み合わせ読み方
P-18のみ成立精緻化した仮説を支持
P-16も成立強固さは介入に依存していた(B)
P-17が成立仮説の中核を修正(Aへの反証)
何も起きない仮説と整合するが、AとDは区別できない

P-16: SOFR−IORB +10bp以上か連銀貸出500億ドル以上。P-17: NFCI週次が0超(9月末−0.548)。P-18: STLFSI4週次が0超(9月末−0.81)。期限はいずれも2027年3月末です。

高圧力の月の金融指標は、規制の前後で違いがあります。規制後は高圧力の24か月すべてでSTLFSI4が0を超えましたが、NFCI総合が0を超えた月はありません。以下は参考比較です。局面は規制後で実質4つしかありません。また、集計は作成時の系列で行っており、9月の再計算にあわせて次号で更新します。

指標規制後 高圧力全月>0到達率全月規制前 高圧力全月>0到達率全月
STLFSI4+0.54+0.1410075−0.47+0.562772
VIX+30.01+24.75——+17.27+27.16——
NFCIリスク−0.10−0.47179−0.48−0.362729
NFCI信用+0.10+0.069274−0.04+0.193662
NFCIレバレッジ+0.41+0.139270+0.080.007350
NFCI総合−0.11−0.3507−0.50−0.332729

中央値と、0を上回った月の割合(%)です。規制後は2010年1月〜2025年9月でn=24、規制前は1997年1月〜2007年6月でn=11です。

実際に波及するとすれば、エネルギーからインフレ、利上げ、長期金利、銀行の債券含み損、預金流出という順が考えられます。2022年の利上げ開始からSVB破綻までは約12か月でした。今後12か月を試験期間とします。

毎月更新する項目

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