マクロリスク・モニター 2026年8月確定版(MR-2026-08)

at.AI / 最終更新 2026年11月3日

実行ID
MR-2026-08
対象月
2026年8月
種類
確定版
モデル版
v2.1–v2.3
作成時点
2026年9月15日
公開日
2026年11月3日

読み方の注意。このレポートは2026年9月15日時点のデータで作成しました。FCOはこの号からv2.1です。この号の作成中に行った全数検定を受けて、モデルの位置づけを「実体・社会・供給網のリスク計測」に変更しました。

作成当時に記していた、認識ギャップを下落余地や切迫度として読む解釈は、その後の検定を受けて撤回したため掲載していません。

この号の結論

目次

  1. 現在地
  2. レジーム判定
  3. 5大リスク
  4. 金融波及の3層チェック
  5. 社会不安と地域紛争
  6. 連鎖の強度
  7. 主観と客観の比較
  8. 予測ログ
  9. 来月の注視項目
  10. データ改定の記録
  11. 出典と限界

現在地

指数内容当月前月前月差区分
GRCS5複合マクロ圧力(5リスク)83.4481.57+1.87Severe
GRCS4時代間比較用(⑤AIを除く)87.0184.31+2.70Severe
FFI金融脆弱性(平時に蓄積する弱さ)71.1070.80+0.30High
FCO金融ストレス(今起きている緊張)3.274.36−1.09Low
SCI連鎖の強度78.8077.20+1.60—
SURI≥60社会不安リスクが60以上の国数(20か国中)109+1—
RCEI地域紛争エスカレーション77.8577.55+0.30Severe

区分は指数ごとの閾値です。定義はリスク計測モデルを参照してください。

2026年の主要3指数の推移の折れ線グラフ
図1 主要3指数の推移。GRCS5とFFIは高位、FCOは低位です。同じ0〜100の尺度で、1つの軸に描いています。

マクロ圧力は上がり、金融ストレスは下がりました。両者の開きは2026年で最も大きくなっています。ただしこの開きを「金融がマクロに追いつく余地」と読むことはしません。全数検定の結果は、そう読む根拠を与えていません。

レジーム判定

8月のレジームは複合マクロ・ストレス+潜在脆弱性です。この判定は4月から5か月連続です。

月GRCS5FFIFCOレジーム
1月49.9166.104.89平常
Normal
2月55.7066.257.51マクロ圧力の上昇
Elevated Macro Stress
3月70.2967.1014.04マクロ圧力の上昇
Elevated Macro Stress
4月75.9868.454.77複合マクロ・ストレス+潜在脆弱性
Compound Macro Stress / Latent Fragility
5月78.9969.503.58複合マクロ・ストレス+潜在脆弱性
Compound Macro Stress / Latent Fragility
6月80.2769.904.32複合マクロ・ストレス+潜在脆弱性
Compound Macro Stress / Latent Fragility
7月81.5770.804.36複合マクロ・ストレス+潜在脆弱性
Compound Macro Stress / Latent Fragility
8月83.4471.103.27複合マクロ・ストレス+潜在脆弱性
Compound Macro Stress / Latent Fragility

5大リスク

リスクMLLevel前月差D
① 気候・食料・水4.04.583.0+3.4+1
② 財政(公的部門)3.63.973.8+2.0+1
③ エネルギー・海運4.44.991.0+3.4+1
④ 政治・地政学4.44.890.4+2.00
⑤ AI・雇用2.82.654.8−4.2−1

M=当月の水準、L=連鎖の結合度(各1〜5)、Level=(0.7M+0.3L)×20。Dは方向(−2〜+2)で、スコアには入りません。

5大リスクのLevelの小多重折れ線グラフ
図2 5大リスクのLevel。5つのパネルは同じ尺度です。

採点の理由

FAOは穀物上昇の要因の1つに、ホルムズ閉鎖による投入財への懸念を挙げています。穀物指数の116.3は2024年5月以来の高さです。

主要な実体指標

指標前月当月
世界気温偏差(℃)0.670.85
FAO食料価格指数130.8133.3
FAO穀物価格指数113.8116.3
Brent原油(ドル)83.490.9
欧州ガス(ドル/MMBtu)18.0621.11
ホルムズ通航(隻/日、報道概算)155
レイオフのうちAIを理由とする割合(%)336.5

Brentと欧州ガスは世界銀行の月平均です。FAOは各号の作成時点の公表値で、後の改定は改定記録に残します。

金融波及の3層チェック

3層のいずれにも波及は見えません。価格の層ではHY OAS、VIXともに低下し、ドル安と新興国スプレッドの縮小が進みました。信用・レバレッジの層では銀行の貸出態度が0.0%で、引締めの動きはありません。配管の層ではSOFR−IORBが+3bp、連銀貸出は月内最大57億ドルです。

層指標前月当月
価格の層米HY OAS(%、月末)2.852.63
価格の層新興国スプレッド代理(bp)299290
価格の層VIX(月末)15.9914.92
価格の層STLFSI4−0.73−0.81
価格の層米30年債(%、月平均)5.105.22
価格の層10年タームプレミアム(%)0.870.88
価格の層ドル指数代理119.70118.57
信用・レバレッジの層NFCI総合−0.53−0.55
信用・レバレッジの層NFCI信用−0.04−0.06
信用・レバレッジの層NFCIレバレッジ0.160.10
信用・レバレッジの層NFCI非金融レバレッジ−0.52−0.49
信用・レバレッジの層銀行の貸出態度(純引締め%)0.0(7月調査)0.0(7月調査)
配管の層SOFR−IORB(bp)+1+3
配管の層連銀貸出の月内最大(十億ドル)7.85.7

STLFSI4とNFCI系列は0が平均で、マイナスは平均より緩い状態です。新興国スプレッドとドル指数は代理系列です。

FCO v2.1 の内訳

項目ウェイト元データ点数
信用(HY OAS)0.252.63%3.04
ボラティリティ(VIX)0.2014.926.53
資金調達(SOFR−IORB)0.15+3 bp4.00
銀行(貸出態度)0.15専門判断4.00
流動性0.10専門判断0.00
介入使用量(連銀貸出)0.155.70.00
FCO1.00—3.27

FCOはこの号から6項目のv2.1になりました。連銀貸出の使用量を項目に加え、100億ドル以下を0、4,500億ドルを100とする対数変換で計算します。市場価格が示さないストレスを拾うためです。旧版のv2.0では8月は3.95でした。資金調達と銀行は5から4に下げました。

FFI の内訳

項目ウェイト前月当月
レバレッジ・信用の質0.207373
満期の壁0.156667
バリュエーション・スプレッド圧縮0.207779
不透明資産0.207373
銀行貸出態度・バランスシート0.105857
対外脆弱性(新興国)0.157069
FFI1.0070.8071.10

FFIは70.8から71.1へ上がりました。満期の壁は66から67へ、バリュエーションはスプレッド圧縮で77から79へ上がりました。銀行は58から57へ、対外は70から69へ下がりました。

社会不安と地域紛争

SURI≥60は9か国から10か国に増えました。チュニジアが60.00で加わりました。SURI≥75は5か国です。今月の採点は全20か国の家計ストレスに+2、10か国にさらに+1としました。単純平均は61.25から62.67、人口加重は61.88から63.34です。

RCEIは77.55から77.85です。速度の項目は75から72に下がり、脆弱性と食料・エネルギー・水の項目が上がりました。戦闘の強度より、影響の広がりが進んでいる形です。

SURI60以上の国数の棒グラフとRCEIの折れ線グラフ
図3 SURI≥60の国数と地域紛争指数。薄い棒は国別データのない内挿値です。
20か国のSURIの横棒グラフ
図4 国別SURI。破線は60と75の閾値です。
国家計抗議政府紛争SURI前月差主な要因
スーダン9773959890.80+1.45内戦・飢饉リスク。食料危機の主因は紛争
ナイジェリア8875718580.75+2.00燃料補助削減+通貨安+選挙。重点監視国
パキスタン8172727876.35+1.55食料+電力+対外債務。人口規模が大きい
レバノン8362867376.35+2.35通貨・財政が既に破綻状態
エチオピア8356758575.05+1.30紛争と干ばつの複合
ミャンマー7745859574.20+0.70内戦継続。抗議より武力紛争が主経路
エジプト8557704767.40+2.35パン・燃料補助金が政治的安定装置。財政と直結
ボリビア7482713066.60+1.40燃料補助削減への抗議が全国化
ケニア7377563563.00+1.75燃料価格抗議で死者。抗議動員が突出
チュニジア7559653060.00+1.30食料輸入依存+財政脆弱
バングラデシュ7161584059.70+1.30食料+エネルギー輸入、政治不安定
ペルー6474613059.10+1.40燃料補助導入で一旦鎮静も財政悪化
トルコ7246484555.30+0.95高インフレの慢性化
アルゼンチン7063552055.25+0.95緊縮と実質所得低下
ザンビア7345602553.80+1.05債務再編途上+干ばつ
スリランカ6856552553.80+1.302022年危機の再発リスク
ガーナ6849522551.45+1.30債務再編後の生活費圧力
フィリピン5841394046.35+1.50コメ価格が政治問題化
モロッコ6146402545.85+1.30干ばつによる農業減産
インドネシア5443333042.25+1.15補助金財政負担が拡大

国別SURIは公開情報に基づくモデル値です。各国の公式評価や格付けではありません。SURI=0.35家計ストレス+0.25抗議動員+0.20政府の脆弱性+0.20紛争の波及。

月SURI≥60SURI≥75単純平均人口加重GDP加重最大値データ
1月6153.1553.3847.8083.20国別実データ
7月9261.2561.8855.2189.35国別実データ
8月10562.6763.3456.5290.80国別実データ
項目前月当月
戦闘強度8585
エスカレーション速度7572
国家の脆弱性6567
食料・エネルギー・水7579
難民・越境8283
RCEI77.5577.85

連鎖の強度

SCIは77.2から78.8です。連鎖2は4.8から4.9、連鎖1は4.0から4.2に上がりました。

5連鎖の月次強度のヒートマップ
図5 5連鎖の強度の推移。色が濃いほど強い連鎖です。
連鎖前月当月前月差
連鎖1 気候→農業→食料→家計→デモ4.04.2+0.2
連鎖2 地政学→エネルギー→インフレ→金利→財政4.84.9+0.1
連鎖3 高金利→財政余力→補助金削減→社会不安3.83.9+0.1
連鎖4 食料・燃料→政情不安→通貨安→輸入インフレ4.04.00.0
連鎖5 AI→採用減→若年所得→消費・政治2.72.70.0
SCI(連鎖の平均×20)77.278.8+1.6

主観と客観の比較

主観のGRCS4は上がりましたが、客観のproxy-GRCSは67.2から65.1へ下がりました。差は+21.9で、基準の±15を超えています。主観は「封鎖が続いていること」を評価し、客観は価格の水準だけを見ているため、差には両方の性質が表れます。この乖離を受けて、Lの上げ過ぎを防ぐルールを次号から導入しました。

GRCS4とproxy-GRCSの折れ線グラフ
図6 主観のGRCS4と客観のproxy-GRCS。主観は専門判断、客観は市場と統計の機械計算です。
月GRCS4(主観)proxy-GRCS(客観)過去比パーセンタイル差
1月50.7760.742.5−9.9
2月57.0756.834.1+0.2
3月73.1574.181.6−0.9
4月79.1476.088.0+3.2
5月82.0174.884.4+7.2
6月83.2366.355.6+17.0
7月84.3167.257.5+17.2
8月87.0165.153.4+21.9

予測ログ

予測は発行時の確率とともに記録し、期限が来たら判定します。この号でP-11〜P-15を発行しました。

ID予測確率期限状況発行
P-01SURI≥60の国のうち3か国以上で、死者を伴う生活費・燃料関連の抗議が発生する0.652026年11月末未判定MR-2026-07
P-02FAO食料価格指数が135以上に到達する0.352026年11月末未判定MR-2026-07
P-03米HY OASの月末値が4.00%以上に拡大する0.202026年11月末未判定MR-2026-07
P-04FCOが30以上に上昇する(2026年9月以降はv2.1で判定)0.152026年11月末未判定MR-2026-07
P-055か国以上で食料または燃料の補助金が新規導入・拡大される0.752027年2月末未判定MR-2026-07
P-06欧州主要国(独仏伊西英)のいずれかで、GDP比0.2%以上の気候関連緊急財政措置が発表される0.552026年12月末未判定MR-2026-07
P-07食料輸出規制を新規導入する国が5か国以上になる(IFPRI)0.402027年2月末未判定MR-2026-07
P-08GRCS4が85を超える0.452026年12月末的中 8月MR-2026-07
P-09新興国2か国以上で通貨危機(3か月で対ドル20%超下落)が発生する0.402027年7月末未判定MR-2026-07
P-10欧州天然ガスが月平均20ドル/MMBtuを超える(世界銀行)0.452026年12月末的中 8月MR-2026-07
P-11FAO食料価格指数が136.0以上に到達する0.452027年1月末未判定MR-2026-08
P-12米HY OASの月末値が3.50%以上に拡大する0.302027年2月末未判定MR-2026-08
P-13ホルムズ海峡のタンカー通航が月平均20隻/日以上に回復する0.252027年2月末未判定MR-2026-08
P-14SURI≥75の国が4か国以上の状態が3か月連続する0.502026年12月末未判定。1か月目MR-2026-08
P-15欧州天然ガスが月平均25.0ドル/MMBtuを超える(世界銀行)0.402027年2月末未判定MR-2026-08

判定済みは2件で、すべて的中です。平均Brierスコアは0.3025で、コイン投げに相当する0.25より悪い水準です。的中でも低い確率しか置かなかった予測は点が悪くなります。未達の予測は期限が来るまで0として計上されないため、この時点の的中率は実力より高く見えます。

来月の注視項目

8月は5条件のうち③だけが成立しました。連鎖1は4.2です。

条件当月の値成立
① FFIが75を超えて維持される71.10未成立
② FCOが2か月連続で上昇し30を超える3.27未成立
③ GRCS4が85を超える87.01成立
④ SURI≥60が12か国を超える10未成立
⑤ 連鎖1が4.5に達する4.2未成立

2つ以上が同時に成立したら、レジーム転換を検討します。

データ改定の記録

出典と限界

この号の限界

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